ラジオ2.0
Pandora, LastFM, Webjay
人間はいつまでも受動でいられないのか、わがままなのか、ラジオを聴くことの意味がかわってきている。「いかに自分好みの音楽だけを選曲して流すか」に焦点をあてたパーソナライズドラジオを提供するサイトがいくつかある。その可能性を開拓しているPandora、LastFM、Webjay。それぞれ全く切り口の異なる3つのウェブサイトを紹介する。
Pandora
Pandoraは、 流れる曲に「好き」「嫌い」の評価をしていくと、 その傾向をもとに自動選曲してくれるラジオ。 また、 自分の好きな曲やアーティストを検索して追加していくことでも、 より個性的なラジオをつくることができる。 傾向を意識しながら好きなようにカスタムしていけば、 気分にあわせたラジオ局を合計100個まで作れる。 気に入ればすぐにiTunes StoreかAmazonで購入できるし、 お気に入りに入れておけば、 いつでも視聴できる(30秒)。
このPandoraはどういう仕組みで動いているのか?実はその裏にはMusic Genome Projectというのがあり、 それぞれの楽曲を体系化する作業を人力でしているらしい。 「この曲はAで始まっていて、 構成はこんな感じで進んでいて、 ベースラインがこうで、 リズムはこうで...」と、 1曲あたり20分から30分も費やして、 ヒトゲノム解析のように徹底的に属性を分析していく。 少しでも主観が入ってしまったら成し遂げられない、 難しい作業だろう。 そしてその解析結果をもとに選曲されていくようだ。 再生中に、 Guide Us > Why is this song playing?(なぜこの曲を再生しているか?) をクリックすると、 「あんたの傾向から判断するに、 オールドスクールで、 ディスコぽくて、 きれいなリリックで、 楽器のパフォーマンスが重要で、 タイトなキックで、 ま、 そういうのが好きなんでしょ?」と、 理由を丁寧に教えてくれる。
last.FM
last.FMはmixiのようなSNSサービスで、 音楽中心に展開している。 ユーザは何をすればいいかと言うと、 ソフトを落としてきて、 好きな曲をパソコンで聴くだけ。 そしてたまに「Love」「Ban」ボタンを押し、 たまにタグをつけるだけでいい。 SNSを利用したWeb2.0的ラジオサービスといった印象だ。
lastFMのラジオ用ソフト。 現在日本のバージョンではラジオを利用できないので、 英語版を使おう。
lastFMでラジオを楽しむためには、 まず専用ソフトをインストールする。 するとiTunesやWinampなどいろんなプレイヤーと連動しはじめる。 音楽を再生すると、 誰の何という曲を何秒聴いたのかが全部lastFMのサーバに転送され、 集まった大量の再生履歴をもとに同じ趣味の人(ネイバー)を割り出し、 次にかける曲を分析してくれるようだ。 つまり同じ趣味の人を探してきて、 その人は他に何を聴いてるかを教えてくれる感じだ。 ただそれだけではなく他にもいろいろあり、 大きくわけて以下の6つがある。
- Neighbour Radio(無料) - 自分の嗜好と似たものを選曲するラジオ
- Grobal Tag Radio(無料) - ユーザのタグ付けによって分類されたものから選曲するラジオ
- Recommended Radio(無料) - 自分へのおすすめが自動選曲されたラジオ
- Group Radio(無料) - 同じグループ(mixiで言うところのコミュニティ)のユーザから自動選曲されたラジオ
- Personal Radio(有料) - 自分が聴いたことのあるものを選曲するラジオ
- Loved Radio(有料)- 「Love」と登録した曲だけをかけるラジオ
このように、 Pandoraが自ら論理的に音楽そのものを解析しようとしているのに対して、 lastFMは完全にそれをユーザまかせにしている。
たまたま見つけたが、 このPandoraとLastFMを強引にくっつけてしまった、 PandoraFMというものもあった。
Webjay
ソーシャルブックマーカーに近い感覚で使えるWebjay
そしてPandora、 lastFMと違って、 少し地味なアプローチをしているのがWebjayだ。 プレイリストコミュニティと言われているが、 わかりやすく説明すると、 mp3のブックマーカーだ。 ウェブからフリーのmp3を探し、 それを登録して自由にプレイリストが作れる。 「あの有名なdjのプレイリストを覗いてみたいし、 すぐに全曲きいてみたい」の「あの有名な」を「適当に誰でもいいから」にかえてみた感じと言えばいいだろうか。
そして好きなアーティスト名などで検索すると、 該当するmp3をフルで再生、 ダウンロード、 自分のプレイリストに追加ができる。 また、 同じ曲を登録している人のプレイリストがずらりと表示されるので、 そこから適当に再生していくと、 また自分好みの曲が流れ、 またそれを登録し... という作業を繰り返していくだけで自分のプレイリストは成長する。 たまにリンク切れのmp3もあるが、 自分のプレイリスト、 いわばブックマークさえ作ってしまえば、 どこにいても自由にダウンロードできる。 ( ほぼ倉庫みたいな感じですが、 参考までにUtabi’s Playlistをどうぞ。 )
比べてみて思うこと
まとめてみると、 Pandoraは音楽解析に、 lastFMは統計に、 Webjayは個人に、 とそれぞれ焦点が違うことがわかる。 どのサイトも共通の目標は「いかに要領よく自分の好きな音楽にたどりつけるか」で、 それを模索中なのだろうけど抜きんでている印象はない。 そしてやはりNapstarになってしまってはビジネスにならないのでリミットを設けている。 そのリミットが視聴する際に邪魔に感じるようだと、 なかなか継続する気にはなれない。 それを抜きにしてどのサイトがより自分の好みに近い選曲をするのか比べてみた。
まず、 仕組みが単純で無理をしていないWebjayが一番いいものに出会える気がする。 あくまでもプレイリストが個人的なものなので、 純粋に他人のDJを楽しんでいるような楽しみもある。 そして皆DJになりたい気分をくすぐられるのか、 プレイリストは質のいいものが多い。 ただ、 ダウンロードのスピードは完全に各サーバに依存するので再生が安定しない時があるのは否めないが、 好奇心が強ければ一番おすすめできる。
感覚的には、 Pandoraがシンプルだし一番安定している。 ただ、 Pandoraは登録曲が少ないせいか、 はたまた近似値しか検索できないからか、 同じ曲が何度もかかる。 今後どういう進歩があるのかが楽しみなので継続してみたい。
そしてlastFM。 無料のものしか試していないが、 あまり好きな音楽がかからない気がする。 有料のものを使えばもっと好みの選曲になるのだろうか。 そもそも、 ローカルでの再生履歴は自分の好みと比例しないと思う。 例えば、 1曲だけリピートでずっとかけっぱなしにしていたとしよう。 聴いているうちに眠ってしまい、 朝起きたらまだかかっていた。 合計リピート回数は100回になってしまった。 同じ100回再生でも、 こういう100回再生と本当に好きで聴いた100回再生を、 コンピュータは判断できない。 また、 アルバム単位でリピートする場合も、 1曲目と15曲目を比べると総計的には1曲目のほうが再生率が高くなる。
lastFMはWeb2.0に一番力をそそいでいる気がする。 しかし集まった情報が膨大でも、 それをうまく生かせないのであれば、 あまり意味はないと思う。 これは新聞2.0にも書いたようにウェブサイトを銀行に例えるなら、 集めた資産の運用がうまくできていない状態だと思う。 そう言った意味では、 Webjayは小さな銀行だが資産を有効活用しているように思える。
今だからWeb2.0なんて言われているが、 「なんだ、 みんなで力を合わせればこんなに凄いことができるんじゃないか」という気持ちに火をつけたのはNapsterに違いない。 インターネットにおける音楽の方向性は、 やはりNapsterをきっかけに大きく変化したと思う。 あいにくその仕組みは危険視され、 周りの警戒心で覆い隠されてしまったが、 「音楽未来形(増田 聡 著)」を読むといつの時代にもそういう杭打ちがあったことを知ることができる。 例えば最初にレコードが普及したとき、 演奏しないのに音楽が流れるなんて、 音楽が死んだも同然だ!演奏することの意味がなくなってしまう!音楽を殺すな!Keep Music Live!とアーティスト側はスローガンをかかげた。 これが「ライブを見に行く」の「ライブ」の由来である。 このようにあたらしい技術が広まった時、 それに反対する圧力は必ずある。 ラジオが普及したときも、 カセットテープが、 CDが、 CDRができた時も同じだ。 ただ忘れてはならないことは、 技術だけではなく人間の受け入れ方も変化するということ。 家の蛇口をひねれば水が出るのにもかかわらず、 コンビニで水を買うようになったように。
Napsterはつい最近、 定額制のダウンロードサービスをスタートさせた。 ようやく出た新しい方向性に期待感はあるが、 日本で最初にDSLを作った気鋭の小会社が、 あっという間に大きい会社に吸収されたり追い抜かれたりしていったことを思い出す。 そのうちiTunes Storeも定額サービスをはじめないとは言えない。 そして定額制が定着すると、 よりクオリティの高いものにお金を払うようになるだろう。 今回紹介した3つのサイトにはその高いクオリティを提供できる可能性が含まれている。 25mのプールにぎっしり詰まった大量のCDを見て、 いったいどれから手にとればいいのだろうか。 聴く気にもなれない。 どれを聴いたらいいのか誰か教えてくれ。 そんな感じ。
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