Monkey Drummer - Chris Cunningham
 

それでもやっぱり触りたい

進歩と洗練のはざま

インターネットで知の根を下ろしていると、面白いものに出くわす。 最近マインドマップというものを知り、自分でも書いてみた。好奇心を煽るものにのめりこんでばかりいると、自分が何を考えているのか、何をしようとしているのかわからなくなる事が多い。そんなとき大脳の神経細胞のひとつをピンセットでつまんで外に引きずり出すと、口から国旗を出す手品のようにずらずらと神経やらニューロンやらがつられて出てくる。脳の中の樹木という感じもする。なるほどーこれにつられてこれが出てくるのかぁ、と客観的に自分の考えていることがよくわかる。
 

マインドマップの一例

そうして出てきた自分のキーワードのひとつが、 「決して触れないものがある。 でも触れていると実感したい」だった。 自分がとりくんでいる音楽とウェブデザイン。 作業を進めていてぶち当たる壁をまえに「自由自在に操作したいのに、 なんでできないんだ!」と道具に苛立つ。 コンピュータミュージックでは、 いい加減マウスで一個ずつパラメータを変えるのは面倒すぎる。 だからMIDIコントローラを使うが、 それでも同時に触れるのは両手でつまんだ2つのノブだけ。 そこで Lemur の登場。 高価だが早く試してみたくてしょうがない。 でも究極的に理想のコントローラは、 そういうヴァーチャルなものではない。 現実世界の中で、 音が出る「物」として存在してほしい。 粘土のように柔らかく、 形をかえると音もかわる「物」。

ウェブデザインの現状はDTPには程遠い。 いつまでたってもHTMLという呪縛、 少し進んでいるといってもCSSという新しい、 ややこしい呪縛。 だからいろんなCMSを使ってみたが、 ソフトウェアごとに仕様が違うし、 同時多言語のものはほとんどないし、 IllustratorやPhotoshopのようにハイクオリティのものが少ない(オープンソースしか試していないのでアレですが)。 つまりWYSIWYGというユーザビリティが話題になる。 Fierri と NOTA には頑張って欲しい。 でもこれが普及しても不満はどんどん出てくるんだろうなと思う。 だから究極的に欲しいのは…紙とペンなのかも。 本当はバーチャルリアルではなくリアルを求めているんじゃなかろうか。

NOTAはwysiwyg ( what you see is what you get )を考えて作られている。

テクノロジーを使っていると、 どこまでが自分で、 どこからがコンピュータが作ったのかわからなくなる場面が多くなる。 それでも自分で作った、 という実感が欲しくなる。 じゃあギターで演奏すればいいし、 紙とペンで絵を書けばいい。 その方法が他のどんな方法よりも実感できるのは間違いない。 でもそれをしないのは、 なぜ?

そこで昔やっていたことを思い出す。 東京から大阪まで歩いて帰ったことがある。 ペーパークラフトが好きで、 何もない状態からエヴァンゲリオンを作ったことがある。 作曲ではX68000を使って、 今なら絶対にマネできないが凄く面倒なプログラミングをしていた。 大学の卒業制作では、 半年以上かけて紙リズムマシンを作った。 こんな具合に、 昔はとてもめんどくさい事を楽しんでやっていた気がするし、 達成感は何よりも大きかった。 当時はWindowsもMacも持っていなかったし、 パソコン通信は曲のアップロードしかしていなかった。 その制限が想像力をかき立てた。 逆に今の自分は道具に不満が多いから、 自分で理想的な道具を作ってしまいたいということばかり考えていて、 肝心の作品ができない。 だってテクノロジーに乗っかるのは楽しい。 海のように無限に広がる可能性。 でも、 何か違う…

江戸時代の300年間、 日本は鎖国していた。 鉄砲という便利な道具を知りながらも、 あえてそのテクノロジーを排除した。 でも刀というテクノロジーは捨てなかった。 そして現在まで残る数々の作品、 美意識、 作法、 哲学などを知れば、 この時期に日本が文化的にどれほど潤っていたか分かる。 あるゲームデザイナの言葉に「技術革新が起こらなければ進歩が止まって、 洗練が始まる」というのがあるらしい。 だからチップチューンという刀を堂々と振りまくる Hally はかっこいい。

ウェブデザインをやめて本を作ろう。 パソコンを捨てて、 紙とペンを持とう。 そして本物の モンキードラマー を作ろう。

 
 
 

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